2016年6月23日、世界に大きく衝撃を与えたニュースが「国民投票で、イギリスのEU離脱が決定」というものでした。国内で「移民反対」などを唱える離脱支持派が予想以上に強かったのです。
これによりキャメロン首相は辞任、英ポンドは大暴落しました。
もちろん世界中がに影響が及び、ほぼすべての通貨の相場がその前後1週間ほどの間大揺れとなりました。多くのメディアでは「円がリスクオフ通貨だから」という解説をしています。
それは間違ってはいないのですが、それだけではないということを知っておきましょう。世界の相場に影響を与える要因となっている「キャリートレード」を理解する必要があります。
キャリートレードとは、機関投資家などが低金利の通貨で資金を調達し、それを高金利の通貨に換え、さらに高金利国の国際などを購入して運用することです。資金の運用益に加えて、金利差益分が利益となります。
世界の市場に流通するそれぞれの通貨には常に金利差があるため、こうしたキャリートレードは常に行われ、世界規模で大きなお金が動いています。
日本はもう20年も超低金利政策を続けていて、低金利通貨の代表格であり、円を借入する「円キャリートレード」は非常に頻繁に行われています。ドルやユーロも低金利が進むと「ドルキャリー」「ユーロキャリー」の対象となります。
円キャリートレードが盛んにおこなわれている状況では、調達した円は売られるので、円安傾向となります。
そんなときに、、以下のような事態が起きたときにはどうなるでしょうか。
・高金利通貨国=投資している国の当局による急な利下げ
・高金利通貨国の(円に対する)為替の暴落
・大きな事件などによる、世界的な金融不安
こうした場合、機関投資家は素早く投資している国から資金を引き揚げて、円を買い戻します。この動きを「巻き戻し」といいます。
これにより、円需要が増えて円高になります。たとえば最近では、2017年6月、イギリスの国民投票でEU離脱が決まったとき、ドル/円では急激に円高が進みました。近年のリスクオフ局面での円高傾向は、「円が安全通貨だから」というのが通説となっていますが、その実際のところは、単にリスクヘッジのために機関投資家がドルやユーロを売って円を買う動きが活発になるわけではありません。
実は、莫大な金額の「円キャリートレードの巻き戻し」が一気に起きているのです。近年ではこうした資金の動きが為替相場の値動きに大きな影響をもたらしています。