為替相場を読むことは、時にはプロ投資家にとっても難しいものです。
それを改めて認識させられたのが、2015年初頭のスイスフラン・ショックでした。
現代はFX市場を介して多くの個人投資家が為替相場に関わっているため、遠いヨーロッパのスイスフラン暴騰は金融関係者だけでなく日本の個人投資家を巻き込む重大な相場となったのです。
今まできわめて安定的な通貨であったスイスフランの突然の暴騰であり、プロの投資家も対応しきれなかったようです。
2015年1月15日、スイス国立銀行(SNB)がスイスフラン高抑制の金融政策を打ち切り、1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃すると発表したところ、外為市場で対ユーロ/スイスフラン相場が一気に30%近くも急騰、それまでの1.2程度から0.86程度まで上がりました。
スイスフラン・ショックはレートの急変に伴って以下のような問題を生じさせました。
1.ユーロの暴落で市場全体が混乱した
対スイスフランで暴落したユーロがその他の通貨に対しても急落することで、他の通貨ペアにまで多大な影響が出ました。
2.大幅なスリッページでロスカットを上回る損失も発生
「スイスフランが上がっても、予約注文を入れてあるから大丈夫」と思っていた人たちも多かったのですが、実際にはアクセスが集中して注文が通りにくい状況が長く続き、さらにロスカット決済も遅れて、最終的には想定外の損失を出した人が多くなりました。
スイスフランショックではFX取引業者も被害を受けました。
証拠金を上回る損失を出した投資家が多く、債権が発生したのです。
金融先物取引業協会は1月28日、未収金の総額は33億円にのぼると公表しました。
また、米国やヨーロッパのFX取引を行う金融会社が経営危機に陥ったり破たんするなど、業界全体に深刻な影響がありました。