「ロスカット遅延」は古くて新しい問題です。
その典型的な事例として、2008年に判決が出た、アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーションのロスカット遅延訴訟があります。
事件は2007年のことです。
主婦の投資家が同社にFX取引口座を開設し、ロスカット・ルールを設定して取引を行っていました。
7月27日、相場が大きく変動したとき、投資家のポジションには大きな損害が出たためロスカット決済が機能して、100万円程度の損失で抑えられるはずでした。
しかしロスカットが遅延したために1000万円程度の損害額が生じてしまったのです。原因はアクセス集中によって起こるスリッページです。
スリッページとは注文発動時の価格と実際に約定される価格との差のことです。
会社側は「ロスカットは100%ではないことを規約に明記している」「ロスカット遅延による損害を保証する義務はない」と主張しましたが、敗訴しました。
この事件ののち、金融庁は内閣府令を改正しました。
1.ロスカット・ルールの厳格化
取引業者にはロスカット・ルールの整備とその遵守がより厳格に義務付けられました。
2.レバレッジの上限が25倍に
当時100倍などのレバレッジをかけることが可能でしたが、2011年8月以降、レバレッジ上限が25倍と規定されました。
いくつかの「ロスカット遅延訴訟」を経て、日本のFX取引市場はさらに健全化されてきたといえます。
しかし、スリッページという問題点は解消されたわけではありません。
いつなんどき、アクセス集中で大幅なスリッページが生じないとも限らないということを十分認識しておきましょう。