日本はお盆休みで金融関係者も気を抜いていた2015年8月11日、中国人民銀行は人民元のレートを突然切り下げ。
そしてこの日から3日連続で人民元レートを切り下げました。
このことで世界は同時株安となり、大混乱となりました。
一度下方に誘導したことで世界の元売りを引き起こし、いっそうの元安を呼び、中国は逆に元安を食い止めるための為替介入をしなくてはならなくなりました。
元安誘導でひたすら経済成長をしてきた時期が終わり、今後は元安なのか元高なのか中国当局も難しい選択が増え、どちらに振れる場合にも世界が大きな影響を受けるでしょう。
そんな中、2015年10月、IMFは国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)として人民元を採用することをほぼ決定しました。
中国の長年の悲願である人民元の国際化への第一歩といえます。
しかし今後、IMFは中国の経済に対して市場の透明化を要求するとみられ、痛しかゆしという側面もあり、今回の「SDR」入りが中国にとってプラスとなるかは不透明です。
世界経済における中国の存在は大きいものの、今までは為替相場においては「元」はあまり影響力がありませんでした。
今後はその勢力図は変わっていくとみられます。
中国の弱点は政治的要素といわれてきましたが、ここへきて経済的にも不安定要因が増えています。
2015年、中国のGDPは7%割れとなりました。
6.9%という数字も一般的に考えれば高い成長率ですが、中国の場合、成長することで資金を調達し、軍事やインフラに多額の投資をしていくというモデルは通用しなくなってしまいます。
今後の成長を支える分野の一つとして中国は世界を舞台とする金融業を狙っています。
狙いが定まると大国ながら日本よりもずっとスピーディに動く中国が、今年の「人民元切り下げ」のように世界に衝撃を与える事件は、今後も大いにあり得るのではないでしょうか。